そのとき僕が受けた衝撃を、どう表現したらいいか。
たいていの人がそうであるように僕は、騙されたと思って食べてみなよ美味しいよ、と言われると、なおさら疑ってしまって恐る恐る前歯の先端あたりでコリ、と少しだけかじってみる。まあ多少美味しかったとしてもいきなり飛び上がってこりゃぁうまいうまいよ!などと叫ぶことは滅多になくて、ううんまあマズいということもないけど顔を真っ赤にして人に勧めるほどのものでもないねぇ、などとちょっとさめたふうに曖昧な笑みを浮かべたりするのだけれど。
Y氏から、「ホットイナズマ」を貸してもらったときの衝撃といったら、もうまさに飛び上がってこりゃあすごいすごいよと叫んでしまったのでした。
ご存じでしょうか、
「ホットイナズマ」。(写真は同等品)
冬限定のあったかい炭酸飲料じゃないですよ。クルマのバッテリーのプラス端子とマイナス端子の間に取り付けると、レスポンスがアップしたりエンジンがかかりやすくなったりエンジン音が静かになったりと、まあ普通の神経を持った人なら「あぁ巷に星の数ほど溢れるプラセボパーツの一ツだなァ」などとロッキングチェアに揺られながら大変落ち着いた気分で、孫の他愛もない話を聞き流すように特に気にも止めないようなパーツなのですけれどもね。
僕もまさにY氏が顔を真っ赤にして、これは凄いですよもうもう凄いんですよ、何も知らなかった後輩が僕の車を運転して、なんか変えましたかって気づいたんですよ、とわめき散らしているのを、どこか冷ややかなまなざしで眺めていたのでした。
ところが、こないだの日曜日。休日出勤で本栖ハイランドのマウンテンクルーズ走行会に行けなくなって腐っていた僕の前に、Y氏がホットイナズマを携えて現れたのです。
じゃあ気分転換現実逃避にちょっくら試してみっかァと、雨の降る中、僕のジムニーに取り付けてみました。
バッテリーの端子に繋げるだけだから、作業はホンの数分。試しにエンジンを掛けてみます。
もともと調子のいいエンジンだから、一発でかかるのは当たり前。
ボンネットを開けたまま、スロットルをクイックイッと開けてみました。
…お?
思わずY氏の顔を見る僕。
ニヤリと笑うY氏。
「な…なんか、吹け上がりがいいような気がするよ」
「じゃあそのへん走ってみたらどうっすか」
走り出すと、明らかに加速が違う。無意味にエンジンを吹かしてみると、レスポンスが数段気持ちよくなってる。
走っている途中でアクセルをぐいっと踏むと、「アイヨッ」とばかりに加速してくれる。今朝までは、「んー?今アクセル踏んだよね?ああ…、まあね、それじゃ、これもお仕事ですからね、よっこらしょ」と(まあずいぶん大げさだけれど)、鈍い加速しかしなかった僕のジムニーがですよ。
“そのへん”を一周して帰ってきた僕は、ひらりと飛び降りるやいなや、Y君これは凄いよ君ぃ、と叫んでオフィスに戻り、さあみなさんホットイナズマ買いましょう、と布教活動を始めたのでしたよ。
Y氏よ。しょせんプラセボ…とバカにしていてすまない。これからは、君のことをもうちょっとだけ信用しようと思う。
さ、買うぞ、ホットイナズマ。
